孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
元旦。
私は夜からオンコールシフトだった。
年を越した後、一人でリビングに残り、ぼんやりテレビを眺めながら考え事をしていたら夜が明けてしまい、ベッドに入った。


私がどっぷり夢の中にいる間に、霧生君は出勤していた。
霧生君が働いている日中は、例年、寮でオンコール前の時間を過ごす時と同じように、のんびり過ごした。
夕食を終えて自室に戻り、ベッドで横になってオンコールに備えていたから、その後帰宅した彼とは顔を合わせないまま――。


午後十一時。
魔の電話がかかってきた。
『来たか』と思ったのは、ほんの一瞬。
これも毎年のことだから、もはや達観した気持ちで応答する。
電話を切るとものの五分で身支度を済ませ、マンションを出た。


一歩外に踏み出して見上げた空は、漆黒の闇。
曇っているのか、わずかな星光すら見つからない。
明日の朝は晴れるかな。
晴れるといいな……なんて考えながら歩くうちに、病院に着いた。
更衣室で着替えを済ませ、手術部ではなく救命救急センターのナースステーションに飛び込む。


「手術部、茅萱です! よろしくお願いします」


マスクを装着していると、私に気付いた救急看護師が歩いてきて、「茅萱さん」と声をかけてくれた。


「今年も正月からオンコール、お疲れ様です。あ。あけましておめでとうございます」


救急とオペ室は、切っても切れない密な関係だ。
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