孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
消化管出血患者の内視鏡的止血処置の後も、次々と搬送されてくる患者の処置に駆り出され、私がオンコール対応から解放されたのは、救急の日勤看護師が出勤した午前八時だった。


「ふう……」


夜勤から日勤への申し送りをする救急看護師を横目に、キャップとマスクを外して、大きく肩で息をした。


「ありがとうございました。お疲れ様です」


それを聞き止められたのか、看護師たちが声をかけてくれる。


「いいえ。お先に失礼します」


私は条件反射の笑みを浮かべ、ナースステーションから出た。


「あー……」


首を左右に傾け、骨をコキコキ鳴らしながら廊下を進むと。


「霞、お疲れー」


前方から声がして、ピタリと足を止めた。


「あ、操!」


朝になってだいぶ落ち着いた救急の待合ロビーの長椅子に、着替えを終えた操を見つけた。


「霞も呼び出されたって聞いたからさ。あ、あけましておめでとう。通常シフトで仕事始めの前に、救急センターで新年の挨拶するの、これで何度目かねえ」


ヒラヒラと手を振ってボヤく彼女に、私も思わず苦笑する。


「連続八回目。あけましておめでとう。今年もよろしく」


オンコール優先一番だったと聞いたっけ。
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