孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
訝し気に首を傾げる彼に、「そ」と頷いて見せる。
「祝!結婚期間満了。だから、納会」
「言葉を返すようだけど、傍から見ればスピード離婚だ。なにが『祝』なのか、盛大に納会の意味もわからない」
「私たち当人同士にとっては契約満了円満離婚なんだし、新しい門出と考えれば『祝』で、盛大に納会でいいじゃない」
胸を張る私の前で、霧生先生が視線を横に流して顎を撫でたその時。
――ピピッ、ピピッ。
「あ」
彼が、スラックスのポケットに手を突っ込んだ。
医療用PHSを取り出し、すぐに応答する。
「はい、霧生です。……わかりました。すぐ医局に戻ります」
目を伏せ、淡々と通話を終えた。
一度睨むようにPHSを見つめ、無言でポケットに戻す。
「あ……じゃ、私も。記録しなきゃいけないし」
私は妙な名残惜しさを断ち切り、軽く手を振って彼の前を通り過ぎた。
スタッフ準備室のドアに手をかけ、オペ中髪を結んでいたゴムに指をかけて解く。
肩にかかる長さのストレートの髪に、ほんの少し結び癖がついて揺れる。
「あ、茅萱さ……」
呼びかけてくる彼に背を向けたまま小さく手を振るだけで、ドアを開けて準備室を出た。
「祝!結婚期間満了。だから、納会」
「言葉を返すようだけど、傍から見ればスピード離婚だ。なにが『祝』なのか、盛大に納会の意味もわからない」
「私たち当人同士にとっては契約満了円満離婚なんだし、新しい門出と考えれば『祝』で、盛大に納会でいいじゃない」
胸を張る私の前で、霧生先生が視線を横に流して顎を撫でたその時。
――ピピッ、ピピッ。
「あ」
彼が、スラックスのポケットに手を突っ込んだ。
医療用PHSを取り出し、すぐに応答する。
「はい、霧生です。……わかりました。すぐ医局に戻ります」
目を伏せ、淡々と通話を終えた。
一度睨むようにPHSを見つめ、無言でポケットに戻す。
「あ……じゃ、私も。記録しなきゃいけないし」
私は妙な名残惜しさを断ち切り、軽く手を振って彼の前を通り過ぎた。
スタッフ準備室のドアに手をかけ、オペ中髪を結んでいたゴムに指をかけて解く。
肩にかかる長さのストレートの髪に、ほんの少し結び癖がついて揺れる。
「あ、茅萱さ……」
呼びかけてくる彼に背を向けたまま小さく手を振るだけで、ドアを開けて準備室を出た。