孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
人混みの隙間に、私は剛を見つけた。
彼の隣にいる小柄な女性が、クスクス笑っている。
背中半分の長さがある、緩く波を打つ髪。
目元をくっきり際立たせるメイクを施していて、私の一瞬の記憶とピタリとは符合しないけれど、多分あの時の、剛の浮気相手。
病棟の新人看護師だろう。
剛と別れてから丸三ヵ月、私は彼と会うことはなかった。
外来や健診の胸部X線の撮影を主に担当している彼と手術部の私は、もともとさほど接点はない。
オペに際し、彼が撮影したフィルムに、執刀医から照会事項がある時、電話やメールでやり取りして、チラッと顔を見る程度。
今はそれも、避けようと思えば避けられる。
女性の方は内科病棟の看護師のようで、手術部のフロアで見たことはない。
同じ院内で働いていて会うこともなかったのに、なんでこんなところで――。
気付かれる前に立ち去りたいのに、私の足は竦んで動かない。
剛は、「霞は頭なんだよ」と、彼女に答えていた。
「何様だってくらい偉そうな口出しと小言ばかりで、下っ端家政婦から疎まれる小うるさいババア」
短く浅い息を吐く音……。
二人が誰を話題にしているか、第六感は働いていた。
彼の隣にいる小柄な女性が、クスクス笑っている。
背中半分の長さがある、緩く波を打つ髪。
目元をくっきり際立たせるメイクを施していて、私の一瞬の記憶とピタリとは符合しないけれど、多分あの時の、剛の浮気相手。
病棟の新人看護師だろう。
剛と別れてから丸三ヵ月、私は彼と会うことはなかった。
外来や健診の胸部X線の撮影を主に担当している彼と手術部の私は、もともとさほど接点はない。
オペに際し、彼が撮影したフィルムに、執刀医から照会事項がある時、電話やメールでやり取りして、チラッと顔を見る程度。
今はそれも、避けようと思えば避けられる。
女性の方は内科病棟の看護師のようで、手術部のフロアで見たことはない。
同じ院内で働いていて会うこともなかったのに、なんでこんなところで――。
気付かれる前に立ち去りたいのに、私の足は竦んで動かない。
剛は、「霞は頭なんだよ」と、彼女に答えていた。
「何様だってくらい偉そうな口出しと小言ばかりで、下っ端家政婦から疎まれる小うるさいババア」
短く浅い息を吐く音……。
二人が誰を話題にしているか、第六感は働いていた。