孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
霧生君がホッと息を漏らし、柔らかく口角を上げる。
「いきなり立ち止まってるから。虚空に話しかけそうになった」
私は、微笑む彼にパチパチと瞬きをしてから、
「ええと……なにをしてるのかな?」
辺りに視線を走らせながら問いかけた。
参拝客で賑わう神社の参道。
向かい合って突っ立ち、両手で私の耳を塞ぐ彼の行動は宗教の勧誘のようでもあり、私たちにチラチラと視線が向けられる。
「き、霧生君」
私は霧生君の両手に手をかけ、自分からそっと離させた。
思い切って、彼の向こうの参道に目を遣ったけれど、剛と彼女の姿は見つからない。
思わずホッとして、胸を撫で下ろす。
そうして初めて、心臓が怖いくらい速く打っていたことに気がついた。
「落ち着いた?」
「え?」
「泣かずに済みそう?」
続けて問われて、私はきょとんとして首を傾げた。
「泣く?」
「聞き返されるってことは、大丈夫そうかな」
霧生君は煙に巻くような言い方をして、ひょいと肩を動かす。
そして、一瞬にして表情を険しく歪めた。
「君はここにいて。ちょっと、殴ってくる」
「行ってらっしゃ……えっ!?」
「いきなり立ち止まってるから。虚空に話しかけそうになった」
私は、微笑む彼にパチパチと瞬きをしてから、
「ええと……なにをしてるのかな?」
辺りに視線を走らせながら問いかけた。
参拝客で賑わう神社の参道。
向かい合って突っ立ち、両手で私の耳を塞ぐ彼の行動は宗教の勧誘のようでもあり、私たちにチラチラと視線が向けられる。
「き、霧生君」
私は霧生君の両手に手をかけ、自分からそっと離させた。
思い切って、彼の向こうの参道に目を遣ったけれど、剛と彼女の姿は見つからない。
思わずホッとして、胸を撫で下ろす。
そうして初めて、心臓が怖いくらい速く打っていたことに気がついた。
「落ち着いた?」
「え?」
「泣かずに済みそう?」
続けて問われて、私はきょとんとして首を傾げた。
「泣く?」
「聞き返されるってことは、大丈夫そうかな」
霧生君は煙に巻くような言い方をして、ひょいと肩を動かす。
そして、一瞬にして表情を険しく歪めた。
「君はここにいて。ちょっと、殴ってくる」
「行ってらっしゃ……えっ!?」