孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
「それも、大晦日で満了の約束だった。私たちは離婚して、私は今頃寮生活に戻れた……はずで」


私が話し終えた時、彼女の牛丼は三分の一ほどに減っていた。


「四日になっても戻って来れないのは、離婚できてないってことだ」


操は口をもぐもぐさせながら、ここにきて初めて言葉を発した。
無言で頷いて応える私に、口をへの字に曲げて「うーん」と唸る。
ほとんど掻き込む勢いで牛丼を食べ終え、ロールケーキのパッケージをバリッと開けた。
ロールケーキを二つに分け、「はい」と私に半分差し出してくれる。


「……ありがとう」


私は蕎麦を食べるのはやめて、ロールケーキを受け取った。
少しずつ千切りながら口に運ぶ。
操も同じようにして食べながら……。


「でも、いいんじゃない? 放射線技師よりハイスペックだし、実はイケメン。悠々自適な、バラ色の新婚生活間違いなし。仕切り直して謳歌してみたら〜?」

「……操、楽しんでるでしょ」


らしくなく、歌うような節をつけた口調を聞いて、私はじっとりとした視線を送った。
茶化した自覚はあるのか、操もひょいと肩を竦める。


「まあ、冗談はさておき。契約の三ヵ月、お試し期間だったと思えば?」

「え?」
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