孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
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仕事始め初日、新年最初の教授回診を午後一番に控えている。
僕は大学医局で、明日からのオペの準備に午前の時間を費やし、その合間にコンビニのおにぎりで昼食をとり、病院に急いだ。


東都大学医学部附属病院の病棟は、エレベーターホールを挟んで東西二つに分かれている。
脳外科は七階で、東側のA病棟が慢性期、西側のB病棟が急性期病棟だ。
A病棟は、主に内科的治療を行う脳神経疾患の患者が多い。
僕が診て回るのは、オペ前・後の周術期患者がいるB病棟だ。


エレベーターを降り、スクラブの上から羽織った白衣の襟を直しながら、B病棟のナースステーションに入った。
中央に置かれた大きなテーブルで、病棟看護師数名が記録に追われている。
恐らく、少しでも残業を減らそうと、休憩時間を充てているのだろう。


「お疲れ様です」

「お疲れ様でーす」


僕が事務的に挨拶をすると、彼女たちもこちらを見ずに返してくれた。
ステーションには、すでに何人かの脳外科医、研修医がいた。
彼らには、軽く目礼する。


「すみません。電子カルテお借りします」


記録に熱中する看護師たちから、「どーぞー」と返事があった。
今週、僕が執刀医を務める患者が二人いる。
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