孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
そもそも霧生君は、そういうものが一番通用しないと言っていいタイプだ。
冷静に立ち返れば、勇気の出し損で終わるのはわかってたのに……。


積んだ。
はっきり、明確に積んだ。


「あーもう……私ほんと、どうしてあんなこと……」


あれから、霧生君と同じオペに入る予定がないのをいいことに、私はマンションでも顔を合わせないように、わざと時間をずらして生活している。
ほんの二週間前までは、霧生君の方が私を避けていたのに、今やまったく立場逆転。
気まずいからって避け続けていたら、どんどん拗れてしまう。
でも、怒らせてしまったし、どう軌道修正すればいいか思いつかない。


『自分で僕を童貞卒業させ、結婚を継続する意味はないと主張して、断固離婚を要求しようと考えた?』


違うのに……完全に誤解された。
離婚せずに結婚を継続する以上、私たちは友達じゃなく夫婦だから、契約結婚期間のように、友達同士の楽しく気楽なルームシェア感覚ではいけない。
彼の秘密を守るためとかじゃなくて、ちゃんと普通の夫婦になるために、私が霧生君を好きになるだけじゃなくて、彼にもちゃんと私を……そんな一心からの行動だった。
今となっては、何故、あんな色仕掛けで上手くいくと思ったのか、自分でもよくわからない。
< 144 / 211 >

この作品をシェア

pagetop