孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
「学生時代から男日照りの娘に、今までなにも言わなかったご両親が、今さら心配?」

「う」


鋭い指摘の前で、私は口ごもった。
操は胡散臭そうに、じっとりとした視線を送っていたけれど。


「……ま、いいけど」


ふっと目力を解き、身体を起こして椅子に深く凭れかかった。
そして。


「そういうことなら、クリスマスは暇でしょ? 久しぶりに二人で行かない?」


握った拳を立てて傾けるのは、ビールジョッキを呷る仕草だと知っている。


「それで、炭火でローストしたチキン食べよう」

「はは……串に刺したやつね」


操とは、大学時代からの付き合いだ。
苦しい実習も国試も、共に乗り越えてきた。
目出度く桜咲き、揃って東都大学医学部附属病院に就職して、なんの縁か、同じ手術部配属になった。


新人は、まず器械出しを学ぶ。
器具を間違えたり、上手く渡せなかったり……気難しい執刀医だと怒られることもあり、一緒に飲んで発散して、慰め合って成長してきた。


心地いいほど、阿吽の呼吸。
私も、彼女の誘いに目元を緩めたものの――。


「……ごめん。クリスマスはちょっと」


曖昧に目を逸らし、彼女の誘いを断った。
操は、「え」と目を丸くして、


「ちょっと……やっぱり次の男いるんじゃないの?」


再び身を乗り出してくる。
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