孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
私の胸がズキッと痛み、アルバムを抱える腕に無意識に力がこもった。


「喧嘩でもしたの? 心配しすぎでしょ、霧生先生。でもまあ、見つかってよかった」


操が溜め息混じりに、彼の肩をポンと叩く。
そのまま踵を返す彼女を、霧生君が振り返った。


「ごめん。ありがとう」


操はひらひらと手を振りながら歩いていき、一番端にある自室のドアを開けた。
私と霧生君は、ドアが閉まるまで見送って……。


「…………」


予期せず二人きりになってしまい、なにを話せばいいかわからない。


「あの……ごめん」


私はきまり悪さで目を彷徨わせ、ボソッと謝罪した。


「すぐに戻るつもりだったの。でも、思ったより時間が経っちゃって……」


弁解する私の胸元に、彼の視線が落ちる。


「……それ、なに」


不審げな声を耳にして、私も自分の胸元を見下ろした。


「あ……」


『卒業アルバム』とは言えずに、言葉をのむ。
黙って俯き唇を噛むと、エレベーターホールの方から賑やかな声が聞こえてきた。
私はギクッとして顔を上げ、


「入って、霧生君」


声を潜めて、彼の腕を取った。


「えっ?」

「ここは看護師寮だよ。霧生君を知ってる人も、うじゃうじゃいる」


霧生君が戸惑った声をあげるのに構わず、部屋の中に引っ張り込んで、急いでドアを閉めた。
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