孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
小気味よくウィンクをする。


「なかなか面倒臭そうな予感もするけど、霞があれこれ世話を焼かなきゃいけない男じゃない。中学の時がどうだったか知らないけど。少なくとも、今は。……違う?」


私は、呆気に取られてポカンとして。


「は、は」


途切れ途切れの笑い声を漏らし、ヘラッと眉尻を下げた。


「マシって……酷い言い方」

「お気に召さなかった? じゃあ、霞は彼をなんて言う?」


靴底をきゅっと鳴らして、先に歩き出す彼女の背中に。


「……私史上最高の、とびきりの男……かな」


自分の中で答えを探し、確認しながら口にする。
操が、ゆっくりと振り返った。


「ありがとう、操。私、霧生君とちゃんと話す。……昔のことも、今のことも」


私は、はにかんで笑ってみせた。
操は私を元気づけようとして、私には非がないように言ってくれている。
もちろん私は、自分の非もよく承知しているから、彼女の言葉で励まされるだけじゃいけないけれど……。


少し、心を軽くしてみる。
すると、今自分が向き合うべきものを、しっかりと捉えることができた。
そう思える。


「それなら、よかった」
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