孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
操はふっと微笑み、小走りで横に並んだ私の肩に、腕を回してきた。


「ま、霞がいらないって言ったら、私がもらってやろうかと思ったけど」

「えっ!?」

「冗談よ。なにせ、結婚してるんじゃ。付け入る隙、なさそうだし」


ギョッと目を見開く私に、ニッと目を細める。


「もう……」


私は苦笑いを返し、二人揃ってナースステーションに入った。


「おはようございまー……」

「あ。鹿野さん、茅萱さん!」


私たちに気付いた手術部看護師長が、挨拶の途中で駆け寄ってきた。


「? おはようございます、師長」


操もきょとんとして、私の肩から腕を離す。


「おはよう」


師長は挨拶もそこそこといった感じで、私たちの目の前で足を止めた。


「二人とも、今日のオペは担当変更。この後すぐ、カンファレンスに入ってちょうだい」

「カンファレンス……私と操が、ですか?」


師長から漂う、ただならぬ空気。
私は、ほんの少し怯みながら訊ねた。


「脳外の一色准教授が、二人をご指名なの」


やや硬い表情で告げられ――。


「は……?」


私と操は困惑して、顔を見合わせた。
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