孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
「霞。私、オペのことで一色先生に質問あるから。先にナースステーションに戻ってて」
操が内緒話みたいに耳打ちしてきて、私の肩をポンと叩く。
「っ、え?」
返事に詰まる私に構わず、「一色先生ー」と呼びかけながら、小走りして行ってしまった。
「ちょっ、操っ。だったら私も……」
霧生君と二人で取り残され、焦って後を追おうとした。
なのに。
「霞」
後ろ手を掴んで止められ、心臓が大きく飛び跳ねる。
「こっちこそありがとう。正直、断られるかもって思ってた。……僕のせいで」
反射的に振り仰ぐ私から、彼はぎこちなく視線を逸らして手を離した。
私はゴクッと唾を飲んでから、改めて正面から向き直った。
「断るわけない。大事な仕事に、私情を挟んだりしないよ。……まあ、意識を取られることはあるけど……」
強気で言い切るには、最近の自分が足枷になる。
ボソボソと言い淀むと、クスッと笑う声が頭上から降ってきた。
「このオペでは、余計なこと考えないで」
「! もちろん」
「僕のことも」
力んで返した途端に被せられた言葉に、思わず口ごもる。
黙って上目遣いで窺うと、霧生君は静かに睫毛を伏せた。
「オペが終わるまでは、僕もこっちに集中する。君のことを考えたりしない」
「…………」
それで、当然だ。
操が内緒話みたいに耳打ちしてきて、私の肩をポンと叩く。
「っ、え?」
返事に詰まる私に構わず、「一色先生ー」と呼びかけながら、小走りして行ってしまった。
「ちょっ、操っ。だったら私も……」
霧生君と二人で取り残され、焦って後を追おうとした。
なのに。
「霞」
後ろ手を掴んで止められ、心臓が大きく飛び跳ねる。
「こっちこそありがとう。正直、断られるかもって思ってた。……僕のせいで」
反射的に振り仰ぐ私から、彼はぎこちなく視線を逸らして手を離した。
私はゴクッと唾を飲んでから、改めて正面から向き直った。
「断るわけない。大事な仕事に、私情を挟んだりしないよ。……まあ、意識を取られることはあるけど……」
強気で言い切るには、最近の自分が足枷になる。
ボソボソと言い淀むと、クスッと笑う声が頭上から降ってきた。
「このオペでは、余計なこと考えないで」
「! もちろん」
「僕のことも」
力んで返した途端に被せられた言葉に、思わず口ごもる。
黙って上目遣いで窺うと、霧生君は静かに睫毛を伏せた。
「オペが終わるまでは、僕もこっちに集中する。君のことを考えたりしない」
「…………」
それで、当然だ。