孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
午前九時。
予定通り、一色先生の執刀でオペは始まった。
うちの病院では前例のない、脳動脈瘤クリッピングと覚醒下脳腫瘍摘出術の同時オペは、脳外科だけでなく他科の外科医の間でも話題になっていた。
脳外科の研修医や医学生の他、他科の教授も多く見学に来ている。
目線を上げると、中二階の見学ルームに、たくさんの人がひしめき合う様子が確認できる。
オペ開始から二時間が経過しても、見学者が減る気配もない。
操が「二時間三十分経過」とタイムカウントを告げた。
それとほとんど同時に、一色先生が脳動脈瘤の露出に成功した。
「霧生、そっち、どうだ?」
マイクロモニターから目を離すことなく、霧生君に進捗を訊ねる。
「アプローチOKです。いつでもどうぞ」
霧生君の方は、一足先に病巣部に到達していた。
モニターを注視したまま、淡々と答える。
「早いな」
一色先生はわずかに目尻に皺を刻み、続いて剣崎先生を呼んだ。
クリッピング術が完了したら、麻酔を中止し、酒巻さんを覚醒させる手筈だ。
その間は、皮膚や硬膜といった痛覚がある部分に、局所麻酔を継続する。
「こちらも順調。減薬開始します」
剣崎先生の返事を聞いて、一色先生が小さく肩を動かした。
予定通り、一色先生の執刀でオペは始まった。
うちの病院では前例のない、脳動脈瘤クリッピングと覚醒下脳腫瘍摘出術の同時オペは、脳外科だけでなく他科の外科医の間でも話題になっていた。
脳外科の研修医や医学生の他、他科の教授も多く見学に来ている。
目線を上げると、中二階の見学ルームに、たくさんの人がひしめき合う様子が確認できる。
オペ開始から二時間が経過しても、見学者が減る気配もない。
操が「二時間三十分経過」とタイムカウントを告げた。
それとほとんど同時に、一色先生が脳動脈瘤の露出に成功した。
「霧生、そっち、どうだ?」
マイクロモニターから目を離すことなく、霧生君に進捗を訊ねる。
「アプローチOKです。いつでもどうぞ」
霧生君の方は、一足先に病巣部に到達していた。
モニターを注視したまま、淡々と答える。
「早いな」
一色先生はわずかに目尻に皺を刻み、続いて剣崎先生を呼んだ。
クリッピング術が完了したら、麻酔を中止し、酒巻さんを覚醒させる手筈だ。
その間は、皮膚や硬膜といった痛覚がある部分に、局所麻酔を継続する。
「こちらも順調。減薬開始します」
剣崎先生の返事を聞いて、一色先生が小さく肩を動かした。