孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
酒巻さんと言語聴覚士が能楽を話題に会話する声を頼りに、霧生君は十時間かけて腫瘍全摘出に成功した。
酒巻さんはICUに移っていて、明日以降、後遺症の観察や詳細な検査が行われる。
できる限り後遺症を避けるという目的で行ったオペは、成功かどうかまだ判定ができないけれど、スタッフ全員が二百パーセントの力を出し切った。
私たちにできる、これ以上ない完璧なオペだった。
オペが終わって術者たちが退室しても、私はずっと興奮が治まらず高揚していて――。
疲れた。
とんでもなく疲れて肩がずっしりと重いけど、心はなんとも言えず軽い。
そのせいか、身体もふわふわしている……不思議な感覚に身を委ね、器械の洗浄とオペ室の清掃を終えて、スタッフ準備室のチェアに座り込んだ。
操は酒巻さんを送り出した後、ナースステーションに戻って、今日のオペの記録をしている。
オペ室にも準備室にも、私の他に誰もいない。
私も、ナースステーションに戻らないと。
明日は休みだし、早く帰ってゆっくり身体を休めたい。
なのに、まるで根が生えたみたいに、立ち上がれない。
放心状態で虚空を眺めていると、ドアの方から物音がした。
私は、そちらにぼんやりと顔を向け――。
酒巻さんはICUに移っていて、明日以降、後遺症の観察や詳細な検査が行われる。
できる限り後遺症を避けるという目的で行ったオペは、成功かどうかまだ判定ができないけれど、スタッフ全員が二百パーセントの力を出し切った。
私たちにできる、これ以上ない完璧なオペだった。
オペが終わって術者たちが退室しても、私はずっと興奮が治まらず高揚していて――。
疲れた。
とんでもなく疲れて肩がずっしりと重いけど、心はなんとも言えず軽い。
そのせいか、身体もふわふわしている……不思議な感覚に身を委ね、器械の洗浄とオペ室の清掃を終えて、スタッフ準備室のチェアに座り込んだ。
操は酒巻さんを送り出した後、ナースステーションに戻って、今日のオペの記録をしている。
オペ室にも準備室にも、私の他に誰もいない。
私も、ナースステーションに戻らないと。
明日は休みだし、早く帰ってゆっくり身体を休めたい。
なのに、まるで根が生えたみたいに、立ち上がれない。
放心状態で虚空を眺めていると、ドアの方から物音がした。
私は、そちらにぼんやりと顔を向け――。