孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
「十五年も経って再会して、あの頃を思い出すとか、また好きになるとか……僕も予想外だった。でも、こうして想定外の事態に陥っては、仕方がない」


私の髪を指から零すと、まっすぐ背筋を伸ばし……。


「昔も今も、僕は君が好きだ」

「っ……」


私は瞬きも忘れて、口に両手を当てた。


「なにをおいても伝えたい思いを告げる時、声が出なかったり言葉に詰まったりしたらカッコ悪いよな。伝わらなきゃ悲しいよな。……悔しくて、忘れられない。僕は、今後の酒巻さんに自分を重ねて、オペをした」


霧生君が、ちょっと困ったように目尻を下げ、コツンと額をぶつけてきた。
同じ目線から私を射竦める黒い瞳は、先ほどのオペ中と同じ強い光を宿し、奥深くまで挑む意志と力が漲っていて――。


「今度は、ちゃんと君に届けたい。霞、僕は君を愛してる。今までもこの先もずっと……一生君だけいてくれればいい」


――ドクッ、と。
心臓が根っこから掘り起こされるような衝撃が、私の全身を駆け抜ける。
身体中、どこもかしこも心臓になったみたいに、ドキドキと脈打つ音があちこちから聞こえるようで……。


「っ……」


声が詰まる。
霧生君がはっきりと伝えてくれた想いに、私もちゃんと答えたい。
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