孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
着替えを済ませた後、私は霧生君の車に乗せられ、彼のマンションに連れ帰られた。
帰ってこなかったのはほんの一週間程度なのに、どうしてだか緊張する。
先に玄関に通され、説明がつかない遠慮でその場に佇んでいると、背後で霧生君が施錠する音がした。


意味もなく、ドキッと心臓が跳ねた、その時。
いきなり抱きしめられた。
ハッと息をのむ間に、顎を掴んで後ろを向かされ、肩越しに覗き込んできた彼に唇を奪われる。


「っ、んんっ……!」


霧生君らしくない行動に驚き、思わず目を瞠った。
だけど、強引に口内を掻き乱され、身体から力が抜けていく。
暗い玄関先に、私と彼が交わすキスの音が淫らに響く。
とんでもなく恥ずかしいのに、私はボーッと浮かされてしまい――。


「っ、は」


霧生君が、短い吐息を漏らす。
唇が離れると同時に、私の膝がガクッと折れた。
しなだれるように倒れ込んだ私を、彼がしっかりと抱き止めてくれる。


「き、霧生、く」


彼のニットの胸元をギュッと握りしめ、私は途切れ途切れの声で名前を呼んだ。


「お……オペが終わったら、ちゃんと話そうって」

「それは、後」

「え、ひゃっ!?」


膝を抱えて彼の肩に担ぎ込まれて、ひっくり返った声をあげる。
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