孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
契約解消プロポーズ
私は、気怠い身体で寝返りを打った。
目蓋の裏が明るく白むのを感じて、うっすらと目を開ける。
視界に映るのは、あまり見慣れないシックなブラウンのカーテン。
その向こうは、すっかり明るくなっていた。


「ん……」


ぼんやりしたまま、無意識に温もりを探って手を伸ばす。
だけど、求めた温もりには触れず、ほんのり体温が移ったシーツを掠めるだけで――。


「っ……霧生君?」


私は、弾かれたように起き上がった。
胸元に毛布を手繰り寄せ、寝室を見回す。


霧生君が、いない。
急いでベッドから降り、床に散らばっていた服を身に着けると、勢いよく寝室から飛び出した。


「霧生君っ……!」

「あ。おはよう、霞」


気が抜けそうなほど穏やかな挨拶で迎えられて、条件反射で足を止めた。
霧生君は、白いシャツとゆったりしたスラックス姿で、ソファに腰かけていた。
シャワーを浴びた後なのか、すっきり短い髪が湿っている。


「霞、シャワー浴びておいで。朝食にはちょっと遅いから、ブランチにしよう。僕が作るよ……って」


シャワーを勧められる途中で、私は彼を抱きしめていた。
霧生君は虚を衝かれたように、私の胸で「霞?」と声をくぐもらせる。


「目が覚めたらいないから、どこに行ったのかと思った……」
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