孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
「まあ、宝物と言うか、思い上がりの痛い記憶と言った方が正解かな。なにせ僕、君が僕と写ってくれたってだけで、脈ありだなんて浮かれて告白したんだから」

「告白」

「……僕は決死の告白のつもりでいた。君にとっては、ただの雑談」


ちょっと自虐的に唇を曲げて、付け加える。


「『あはは、霧生君言い過ぎ〜!』って笑われて、相手にもされなかったと思った」

「! ち、違うよっ。そんな、告白とか思わなかったから」

「そう。伝わってないって思えたらよかった。でもあの頃、僕の頭も心も卑屈でガチガチだったから。その後、君がバスケ部のキャプテンだった男と付き合い始めて、やっぱりキモデブの僕じゃダメなんだと……」

「……? ちょっと待って。私が誰と付き合ったって?」


天井を見上げ、しみじみと語る彼に引っかかりを覚え、私は眉根を寄せて質問を挟んだ。


「バスケ部の元キャプテン。ベリーショートヘアでひょろっと細長い、僕とは天と地ほど違う体型だった……」

「違う違う! あれは妹が憧れてた人で、私は付き合ってない!」


彼の回答で合点して、慌てて否定する。
霧生君が、「え?」と眉間に皺を刻んだ。
私は、お腹の底から深い息を吐き――。
< 196 / 211 >

この作品をシェア

pagetop