孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
「君にとって、僕を名前で呼ぶのは、僕の前で全裸になる行為に等しいってこと?」

「! い、言い方っ!」


赤裸々すぎるツッコミに、私は顔を茹だらせる。
耳まで真っ赤にしながら、ソファの上で膝を抱え込んだ。


「だって……昔も今もずっと『霧生君』だったのに、なんかその……いきなり特別な人になった感が半端じゃなくて」


ボソボソと言い訳する私に、霧生君が短く浅い息を吐く。


「間違ってないでしょ」

「そうだよ。だからこそ、意識しすぎてドキドキしちゃうから……」


自分でも、なにを中学生みたいに、と思う。
でも、これもきっと、恋する相手が霧生君だからこそ……本当に特別な人だから、こうして一緒にいるだけで胸が躍る自分にも戸惑う。
霧生君は、声を消え入らせて黙った私を、不服そうに眺めていたけれど。


「そうか。意識できる余裕を奪えばいいのか」


しげしげと、顎を撫でる。


「え?」

「昨夜と同じように、君がいっぱいいっぱいになった時を狙って乞えば、『颯汰』って連呼してくれる?」

「!?」


彼が真面目な顔して、頭の中で思い起こしていることを想像したら、顔から火が噴きそうだった。


「霧生君っ!!」


暑くもないのに背中に変な汗を伝わせながら、声を張って彼の妄想を制した。
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