孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
「僕も君も休みだし。霞をドキドキさせ続けて、休日を過ごすのも」


ちょっと挑発的に目を細め、私をひょいと横抱きにして抱え上げる。


「えっ……い、今から?」


思わず彼の首にしがみついて、声を上擦らせる私に、


「煽っといて、惚けるの?」


困ったように目尻を下げた。


「だ、だって。フレンチトースト……」


私はソワソワして、彼から視線を逸らす。
一瞬の間の後――。


「……ぶっ」


霧生君が吹き出した。


「ほんと……君は」


くっくっと肩を揺らしながら、私を床に下ろす。


「色気より、食い気だね。じゃ、ブランチが先。シャワー浴びといで」


背を屈めて私を覗き込み、軽く握った拳で額を小突く。


「! う、うん」


私は条件反射で額に手を当ててから、彼にくるっと背を向けた。
キッチンから出かかったものの、ピタリと足を止め、そっと振り返る。


霧生君は、キッチン台に軽く腰かけていた。
私が立ち止まったのに気付かないのか、大きな手で顔を覆って、肩を動かして息を吐く。


「ったく……。こっちは初心者だって、忘れてるだろ……」


耳を真っ赤にして、独り言ちるのを聞いて……。


「……っ」


きゅんと胸が疼く自分に慌てて、私は急いでバスルームに向かった。
< 200 / 211 >

この作品をシェア

pagetop