孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
看護師になって就職しても、学生時代以上に勉強と成長が求められる過酷な日々。
恋愛する時間も機会も皆無。
それ以前にそんな気力もないまま、月日はあっという間に過ぎていった。


剛と付き合うことになった時、私は二十九歳。
彼ができるなんて、奇跡的だった。
年齢も年齢だし、これは神様がくれた、結婚の最後のチャンスじゃなかろうか……。
切迫観念に駆られ、気張って尽くした自覚がある。


私のお節介は、なにも恋愛に限らず、過去の数々の失敗が鮮明に浮かび上がった。
そのすべてが、頭の中をまるで走馬灯のように駆け巡る。
ああ……私、ほんとダメだな。
剛に言われるまで、懲りずに同じ失敗を繰り返していたことに気付けなかった――。


「剛はまだ若いし、干渉して小言ばかりの年上彼女なんて、鬱陶しかったに決まってる。浮気されて当然です」


自虐的に言って納得しようとすると、一度止まった涙が再び込み上げてきた。


「一般企業に勤める妹が先に結婚したので、親も私に『あんたはどうなの』ってせっつき始めて。振られて別れたなんて言ったら、がっかりさせる。ほんと、三十にもなって心配かけてばっかりで、自分が嫌になる……」


顔を背け、ズッと洟を啜り……。
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