孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
オペは滞りなく進み、霧生先生の見込み通り、開始からたった二時間で終わった。
「ICUへの申し送り、頼みます」
検体を病理に提出する手続きをしていた私に、霧生先生がそう声をかけてきた。
「はい」
私は短く返事をして、額にうっすら汗を滲ませて出入口に向かう彼を目で追った。
肉眼で術野を確認できない内視鏡下のオペでは、普段以上に繊細な手技が求められる。
目視できないという点で、開頭術より神経を使うと言う脳外科医がほとんどだ。
でも、オペ室を出ていく広い背中は、平常心を通り越して平常そのもの。
繊細で無駄のないメス捌きは、相変わらず見事だった。
さすが、脳外科医局一のホープ――。
研修医課程を終えて二年目の三十歳。
医師としてはまだまだ若手。
もちろん脳外科医としての経験値も、新人に等しい。
それでも、前任のパリの名門病院で、脳外科でも最難関と言われる脳幹手術を、何例も成功させている。
日本の医学情報誌でも『世界が誇る一流医師』と紹介された、医学界の有名人。
技術はもとより、この若さで脳幹に挑む度胸と将来性に惚れ込んだ脳外科教授が、熱いオファーを送り続け、VIP待遇でパリから直々に呼び寄せた。
「ICUへの申し送り、頼みます」
検体を病理に提出する手続きをしていた私に、霧生先生がそう声をかけてきた。
「はい」
私は短く返事をして、額にうっすら汗を滲ませて出入口に向かう彼を目で追った。
肉眼で術野を確認できない内視鏡下のオペでは、普段以上に繊細な手技が求められる。
目視できないという点で、開頭術より神経を使うと言う脳外科医がほとんどだ。
でも、オペ室を出ていく広い背中は、平常心を通り越して平常そのもの。
繊細で無駄のないメス捌きは、相変わらず見事だった。
さすが、脳外科医局一のホープ――。
研修医課程を終えて二年目の三十歳。
医師としてはまだまだ若手。
もちろん脳外科医としての経験値も、新人に等しい。
それでも、前任のパリの名門病院で、脳外科でも最難関と言われる脳幹手術を、何例も成功させている。
日本の医学情報誌でも『世界が誇る一流医師』と紹介された、医学界の有名人。
技術はもとより、この若さで脳幹に挑む度胸と将来性に惚れ込んだ脳外科教授が、熱いオファーを送り続け、VIP待遇でパリから直々に呼び寄せた。