孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす～契約離婚するはずが、容赦なく愛されました～

楽しみにしすぎたからか、クリスマスはあっという間にやってきた。
霧生君は、午後七時に帰ってきた。
リビングのソファで待っていた私に、「すぐ作るよ」と言って、腕捲りをしながらキッチンに向かう。


この一週間、彼に当直勤務があったのもあり、病院でも家でもいつになくすれ違いだった。
同じ屋根の下で暮らしていながら、ゆっくり顔を見るのも久しぶりな気がする。


早速料理を始める彼をしばらく眺めて、私はソファから立ち上がり、キッチンに入った。
後ろに立ってひょいと手元を覗き込むと、霧生君は肩越しに振り返った。


「お腹空いた？」


パスタポットにたっぷりのお湯を沸かしながら、訊ねてくる。
私は今日、午後五時で仕事を終え、彼が帰ってくるのを一時間近く家で待っていた。
待ちくたびれていると思われたのかもしれない。


「それとも、僕の料理じゃ不安？」


悪戯っぽく目を細めて、お洒落な香草を纏った鶏のもも肉をフライパンに並べる。
私は黙って首を振って否定した。


「いつもながら、霧生君の料理は適当ってレベルじゃないよね」


フライパンの中でパチパチと音を立てるチキンを見つめ、感嘆の息を吐く。