孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす～契約離婚するはずが、容赦なく愛されました～

一度引っ込んだ質問を繰り返すのも気が引けて、私は口を噤んだ。
すると。
ぐるるるる――……。
私と彼の間に、やけに低いくぐもった音が響いた。


私は瞬時になんの音か察して、ほとんど条件反射で両手でお腹を抱え込んだ。
だけど、霧生君も私のお腹に視線を注いでいて、誤魔化しようがない。
頬がカーッと火照るのを感じながら、彼から一歩飛び退いた。


「あっ、あのっ。今のは……」


焦って弁解しようとしたけど、霧生君は口元を手で覆って、くっくっと声を漏らす。
しっかりはっきり聞かれたのは、疑いようもない。
あまりの恥ずかしさで、顔が茹だる。
霧生君は笑いを噛み殺し、再び蓋をしながら、


「すぐできるから、茅萱さんはテーブル準備しておいて」


カウンターの向こうのダイニングテーブルを、顎先で示した。


「ワイングラスと、ナイフにフォーク。プレート二枚ずつ」

「う……はい」


これ以上ここにいてまたお腹が鳴るのを聞かれたら、絶対頭から蒸気が噴射する。
私は小さく身を縮めて、言われた通りテーブルのセッティングを始めた。


私と霧生君は一緒に食事をする時、向かい合わせではなく並んで座る。