孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
私は躊躇いながら、彼に視線を戻し、


「開けてみてもいい?」

「もちろん」


にっこり笑って快諾されて、そっと箱を開けた。
そして。


「わあ、可愛い……!」


思わず、声を弾ませた。
優しいピンクゴールドの、ハート形のペンダントだった。
真ん中に埋められたピンクの石が、天井の明かりを受けてキラッと輝く。


「僕、あまり宝石とか詳しくないんだけど、ピンクサファイアって言うんだって。なんとなく、茅萱さんに似合うと思ったから」


なんでもないことのようにしれっと説明してくれる彼を、恐る恐る見上げた。


「こ、こんな高価なもの。悪いよ」

「悪くないよ。君は僕の奥さんだから」


恐縮して言葉を挟む私に、霧生君は目を細める。


「まだ、今は」


どこか自嘲気味に続けるのを聞いて、私はきゅっと唇を結んで俯いた。


「……気に入らなかった?」


遠慮がちに探られて、勢いよく首を振って否定する。


「嬉しいよ。本当に、嬉しい」

「ならよかった」

「でも……奥さんなんて。契約結婚って言っても、夫婦らしく振る舞う必要はなかった。それも、あと一週間なのに」


言い回しを考えながらたどたどしく言って、ぎこちなく視線を外す。


「同居も、私のメリットばかりだった。それなのに、最後にこんな素敵なプレゼントまで……」
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