孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
すると。


「っ……う」


くぐもった呻き声にギョッとして飛び起きる。


「え? 霧生君、どこか具合悪い!?」


胸元に毛布を引っ張って身体を捩り、サイドテーブルの電気を点けようとするのを、


「灯り、点けるなっ」


鋭く制され、ぎくりとして手を竦める。


「くそっ……」


忌々しげな舌打ちを聞いて、恐る恐る振り返り……。


「……え?」


私は、思わず目を瞠った。
月を隠していた雲が切れたのか、部屋の中が先ほどまでより幾分明るく照らされていた。
胡坐を掻き、立てた片膝に額を預けてうなだれる霧生君の姿が、仄白く浮かび上がる。
彼の横には、封を切った小さな四角いパッケージが散乱していた。


「え、ええと……?」


目にしたものへの困惑が、憚ることなく声に表れてしまった。
霧生君がビクッと肩を震わせ、勢いよく顔を上げる。
ハッとしたように息をのみ、私の視線の方向を探して自分の手元に目を落とし……。


「っ……見るな!!」


散乱していたものをザッと掻き集めて片手で固く握り潰し、私に背を向けてベッドから降りた。


「ごめん。……無理だ」


早口で言って、床に落ちていた衣類を引っ掴み、ドアに向かって走り出す。


「え、ちょっ……霧生君!?」


慌てて呼び止めた私を振り返りもせず、寝室から飛び出していってしまった。
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