孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
霧生君はほんの少しも表情を動かさずさらりと言って、親子丼を食べ終えた。
綺麗に空になった丼をローテーブルに置き、「ご馳走様でした」とここでも丁寧に両手を合わせる。
私は、「う」と口ごもり……。
「あの……霧生君。それ。結婚継続って……」
半分諦めの気分になって、恐る恐る言葉を挟んだ。
「嫌とは言わせないよ」
「っ、でもっ。私が霧生君の……秘密知ったからって、なにも心中なんて!」
いつになく強引な彼に焦って声を上擦らせる私に、霧生君は「はあ?」と眉根を寄せた。
「心中? 人聞きが悪い」
「人聞きとかどうでもいい。早まらないで。思い留まって!」
矢継ぎ早に口走る私に、怪訝そうに首を捻り、
「なにを勘違いしてるのか知らないけど。僕の秘密を、人生最強の恥辱にしたのは君だ。こうなったら君と僕で共有して、守り抜くしかない。そう考えただけだよ」
横柄に踏ん反り返って、長い足を組み上げた。
「……は?」
――よくわからない。
霧生君は、混乱して難しい顔になる私を視界の端で見遣り、クスッと笑った。
「茅萱さん。僕は別に、三十の今まで女を知らずに生きてきたことを、恥ずかしいなんて全然思ってないよ」
「え?」
綺麗に空になった丼をローテーブルに置き、「ご馳走様でした」とここでも丁寧に両手を合わせる。
私は、「う」と口ごもり……。
「あの……霧生君。それ。結婚継続って……」
半分諦めの気分になって、恐る恐る言葉を挟んだ。
「嫌とは言わせないよ」
「っ、でもっ。私が霧生君の……秘密知ったからって、なにも心中なんて!」
いつになく強引な彼に焦って声を上擦らせる私に、霧生君は「はあ?」と眉根を寄せた。
「心中? 人聞きが悪い」
「人聞きとかどうでもいい。早まらないで。思い留まって!」
矢継ぎ早に口走る私に、怪訝そうに首を捻り、
「なにを勘違いしてるのか知らないけど。僕の秘密を、人生最強の恥辱にしたのは君だ。こうなったら君と僕で共有して、守り抜くしかない。そう考えただけだよ」
横柄に踏ん反り返って、長い足を組み上げた。
「……は?」
――よくわからない。
霧生君は、混乱して難しい顔になる私を視界の端で見遣り、クスッと笑った。
「茅萱さん。僕は別に、三十の今まで女を知らずに生きてきたことを、恥ずかしいなんて全然思ってないよ」
「え?」