愛人でしたらお断りします!
映像を流したまま、真由美が話を続ける。
「この温泉街に、インスタなどで人気が出た洋菓子店があって取材したんです」
「洋菓子?」
思わず蒼矢が話に喰いついた。
「はい、‶湯の町シュークリーム”といいます」
真由美からシュークリームと聞いて、蒼矢は目を見開いた。
椿が一番好きなものだ。
「もしかして……」
「黙って!」
画面はレポーターが喋りながら小さな店に入って行くところだった。
『こちらが、今話題のお店シャトンさんで~す』
レポーターの女性がにこやかに紹介している。
店構えは温泉街らしい和風の外観だったが、中に入ると洒落た雰囲気だ。
白と黒を基調にした壁面に、ショーケースの中に並んだ色とりどりのケーキが映える。
『わー、美味しそうなケーキが並んでいますよ~』
ショートケーキやモンブラン、濃厚そうなチョコレートのケーキが映し出されている。
『こちらのお店を経営なさっている笹本祐次さんで~す』
甘ったるく喋るレポーターが、誠実そうな男性を紹介した。
優しそうな笑顔の店主だ。
取材テープとあってカットを変えるために止めたり、口ごもったらやり直したりの連続だった。
しばらくレポーターと店主の男性が会話をした後、いよいよシュークリームの話題になった。