愛人でしたらお断りします!
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保育園の入園式は朝9時から始まった。
こじんまりとした園だが、ステージ付きの小さなホールがあった。
ここに一歳から五歳くらいまでの子が保護者とともに集合している。
会場は緊張した中にも微笑ましい空気に包まれていた。
園長先生の歓迎の言葉を聞きながら、椿は両親のことを思い出していた。
自分のときはどうだったのか、今となってはよく思い出せない。
(お父さんやお母さんはどうしていたっけ……)
娘の成長を喜びながらも、その姿を見せる相手がいないことが寂しかった。
だが、椿は少しも後悔していない。
あの日、自分から望んで蒼矢を求めた気持ちに偽りはない。
ただ彼に愛されたかったし、彼に満たされてとても幸せな夜だった。
(なによりもあなたが大切なのよ、優愛)