愛人でしたらお断りします!


「お隣さんだっていうだけで、頼ってしまってごめんなさい。でも、私ひとりじゃ難しすぎて……どうすればいいのかわからなくて……」

「会社のことか? 亡くなった(たすく)社長がひとりがんばってプティット・フルールを経営していたようなものだからな」

頷きながら椿は言葉を続ける。

「そうなの。でも、聡志(さとし)叔父さんが経営権が欲しいって言いだして……」
「まさか? 聡志って、亮社長の弟だったよな?」
「ええ」

椿は目まぐるしく変わる環境に混乱してはいるが、蒼矢に何とか状況を伝えようと必死だ。
両親を亡くしてからは悲しむ間もなく、執事や弁護士たちの力を借りて葬儀を出したり山のような事務作業をこなしてきた。
だが、いきなり父の弟の栢野聡志(かやのさとし)が屋敷に乗り込んできた。
『会社を継ぐのは自分だ』と言って、強引に6月の株主総会で新社長として認めさせると宣言したのだ。


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