愛人でしたらお断りします!
「もう一度、やり直させてくれ」
「え?」
優愛を片腕で抱いたまま、蒼矢は椿に一歩近づいてきた。
「キチンとプロポーズもする。式も挙げよう。君と子どもと三人で暮らすんだ」
「そんなこと急に言われても……子どもがいたから責任を取るって言うの?」
椿は情けなくなってきた。
責任感の強い蒼矢なら言いだしかねないから、妊娠を知られたくなかったのだ。
「だから! 俺はお前が側にいないとダメなんだ!」
これまで完璧だと思っていた蒼矢から、思いがけない言葉を言われて椿は目を見開いた。
「今、なんて?」
「なん度でも言うさ。昔からお前が好きだった。側にいてほしいんだ」
「信じていいの?」
「お前が姿を消してから、側にいないのがどれほど堪えたか……」
「蒼ちゃんが?」
「ああ、どれほどお前が必要か思い知ったよ」
椿は知らない人からの告白を聞いているような気持ちになった。
蒼矢から弱気な言葉など、これまで一度も聞いたことがなかったのだ。
「俺は完璧じゃあないさ。知らないうちにお前を傷つけてしまった」
「それは……」
「許してくれるなら、もう一度始めからやり直したい」
この人は真剣なんだと、やっと椿にもわかった。
そう思うと、もう涙が溢れて止まらない。