愛人でしたらお断りします!
しあわせを掴んで
***
「ただいま~」
玄関から娘の大きな声がした。
「ただいま帰りました」
同時に少し息を切らした久保田の声がする。
キッチンからゆっくり歩いて椿が迎えに出ると、優愛がニコニコ顔でリビングへ入ってきたところだった。
「お帰りなさい、優ちゃん」
「ママ、ひいじいじがクッキーありがとうって」
「そう、喜んでくださった?」
「うん! 優愛もいっしょに食べたよ」
お隣の久我家におやつのお裾分けに行きながら、娘はちゃっかり自分も食べてきたようだ。
「あらあら、あなたの分はうちにあるのに」
久保田が慌ててフォローした。
「大丈夫ですよ、一枚だけですから」
「そう?」
「朔太郎様から、椿様は無理をしないようにとのお言葉でございました」
「まだ大丈夫なのに」
「きっと、お産が近いから心配なさっているんでしょう」
大きなお腹を抱えながら、椿は微笑んだ。