愛人でしたらお断りします!
「で、なんで俺なんだ?」
「そうちゃ……いえ、久我さんの家ならうちの株をかなり持っているし、社内から叔父に抵抗してもらえるでしょう?」
唐突な提案だが、着眼点は悪くはない。
だが、あくまでも蒼矢が『うん』と言えばが前提だから詰めの甘い話だ。
「お前はどうするんだ?」
蒼矢の表情は硬く、椿には彼の考えが読み取れない。
「私はこれまで通り商品開発部でケーキ作りを担当できればいいの。今の常務に社長職を任せて、久我さんに副社長になってもらえたらって思って」
「副社長?プティット・フルールの?」
「さすがに、いきなり社長には難しいかもしれないし……」
椿の申し出の意味は蒼矢に伝わったようだが、今すぐに『ハイ、そうですか』と言える話ではない。
「却下だな」
あっさりと蒼矢から断りの言葉を告げられたが、椿はなおも食い下がった。
「お願いします! 助けてください!」