愛人でしたらお断りします!
側にいるだけで
椿は結局、株主総会で社長として認められてしまった。
(どうしてこんなことに……)
椿にだってわかっている。自分くらい会社のトップに向かない人間はいないだろう。
社長令嬢として育ってきたが、会社の経営なんてまったくの素人だ。
どちらかといえば、人の前に立って進むより誰かの後をついて行く方が自分らしいとさえ思っている。
しかも椿は小さい頃から勉強は苦手で、時間さえあればお菓子を食べるか作るかしている子だった。
読む本と言えば世界の料理本だし、外国語だって覚えられるのは料理に関する言葉ばかり。お菓子を作っていれば幸せになれると本気で信じていたくらいだ。
その結果、当然のように椿の学業成績はさっぱりだった。
あまりの酷さに、毎日のように栢野家に遊びに来ていた蒼矢が勉強を教えてくれたから短大まで進学できたようなものだ。
(だから、蒼ちゃんに副社長になってってお願いしたのに……)
どうしてこうなってしまったのだろうかと、毎朝ベッドで目が覚めた瞬間から
椿の心は沈みきっている。