愛人でしたらお断りします!
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久我蒼矢は、椿の想像以上に優秀な人物だった。
レストランでのざっくりした話し合いの後、さっそく椿の叔父の企みを調べ上げ、大手スーパーの会長ともKUGAコーポレーションの後継者として堂々と対応してみせた。
それから取締役会までに古参の役員たちを個別に回って説得し、
久我家が椿を支持していることを印象付けた。
社長のひとり娘とはいえ、まだパティスリーとして会社で働いているだけの椿を社長に据えるのには反対の声もあった。
だが蒼矢はKUGAコーポレーションの現社長である祖父にも働きかけて、
椿の叔父、聡志が持つプティット・フルールの株より、椿が持つ株と祖父や自分が持つ株を合わせるとかなり上回ることを公表したのだ。
KUGAコーポレーションが椿のバックには付いているいると思わせたのが社長就任の決定打になった。
叔父は大手スーパーチェーンにプティットフルールを吸収合併させる取引に、自分の利益を優先させていた。その事実を白日の下にさらされてしまい、会社からあっという間に去っていった。
そして蒼矢は椿を社長に、栢野家に忠誠心の強い常務の浜坂を副社長に押した。
自分は椿の秘書として常に側にいることで社内に睨みを利かせ、仕事の補佐をしようと決めたのだ。