愛人でしたらお断りします!



「聞いてます。次に出す商品が決まらなくて、全体の進捗が遅くなってるって」
「椿さん、なにかアイデア浮かんでますか?」
「この前からあれこれ試作品を試しているんですが決め手がなくて」

さっそくスタッフと話が弾む。

「こんなのどうかな?」

椿は何種類かのケーキのイラストつきレシピを拓真たちの目の前に広げて見せた。
パッと見ただけで、カラフルな色使いだとわかるケーキや焼き菓子だ。

「可愛いデザインだけど、これカップケーキなの?」
「インスタ映えしそうなカヌレもあるな。このコーティングはなに?」

「こっちはティーサロン向けのパフェですか?」

皆が口々に意見を述べている。
商品開発部では誰もが平等に、忌憚なく意見を述べることになっているのだ。

「私のいち押しは、5色のモンブランです!」

椿が机の上に置いたレシピの中から、一枚のイラストを指差した。

「はあ?」

椿は自慢げだが、パティシエたちはピンときていない。
モンブランでは目新しさがなさそうに思えたのだ。

「通常のものより少し小ぶりにして、女性でもふたつくらい食べられちゃいそうな感じにしたいの」

「確かに、モンブランふたつは食べないもんね」
「マカロン感覚で食べてほしいなと思って」

「それぞれの味は?」

やっとみんなが椿の意見に反応した。

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