愛人でしたらお断りします!


「じゃあ、俺はなんなんだ?」

エレベーターの狭い空間で急に蒼矢に詰め寄られ、椿は息が詰まりそうになった。

「な、なにって……社長秘書?」
「それだけか?」

「お隣に住んでる人?」

「他には?」

いつもの皮肉っぽい蒼矢とは違って、真剣な眼差しで椿を見つめてくる。

「え……と?」

椿は蒼矢の問いに、どう答えるのが正解なのかわからない。
ふたりの間にそれ以上なにがあるのだろうと、真剣に考え込んでしまった。

「もういい、悩むな」

蒼矢がそう言った時に、エレベーターが15階に到着した。
まだ考えている椿を、蒼矢は見下ろしたままだ。
30センチ近い身長差だと、椿はかなり見上げることになる。

「答えを教えて」

椿が上目遣いに蒼矢を見たら、一気に不機嫌そうな表情になった。

「もういい。仕事に戻るぞ」
「は、はい……」

結局、椿は答えを聞きそびれてしまった。




< 34 / 129 >

この作品をシェア

pagetop