愛人でしたらお断りします!
「じゃあ、俺はなんなんだ?」
エレベーターの狭い空間で急に蒼矢に詰め寄られ、椿は息が詰まりそうになった。
「な、なにって……社長秘書?」
「それだけか?」
「お隣に住んでる人?」
「他には?」
いつもの皮肉っぽい蒼矢とは違って、真剣な眼差しで椿を見つめてくる。
「え……と?」
椿は蒼矢の問いに、どう答えるのが正解なのかわからない。
ふたりの間にそれ以上なにがあるのだろうと、真剣に考え込んでしまった。
「もういい、悩むな」
蒼矢がそう言った時に、エレベーターが15階に到着した。
まだ考えている椿を、蒼矢は見下ろしたままだ。
30センチ近い身長差だと、椿はかなり見上げることになる。
「答えを教えて」
椿が上目遣いに蒼矢を見たら、一気に不機嫌そうな表情になった。
「もういい。仕事に戻るぞ」
「は、はい……」
結局、椿は答えを聞きそびれてしまった。