愛人でしたらお断りします!
「噂だと、あなたKUGAコーポレーションの御曹司にべったりなんですってね」
数年ぶりに会ったというのに、いきなりなじるように言われたので椿は驚いてしまった。
上品そうに見えるあかねの口から、下卑た言葉が飛び出してきたのだ。
「べったりって……」
「今夜も連れまわしていたじゃない」
仕事上どうしても蒼矢と一緒に行動することになるが、椿から強要している訳ではない。だがあかねは、椿が無理やり蒼矢を側に置いていると思っているようだ。
「どういうコネを使ったら、あの久我蒼矢さんを侍らせられるのかしら。一度椿さんにお聞きしてみたいと思っていましたの」
「そんなことは……仕事ですから……」
しどろもどろで答える椿の周りには、いつの間にか数人の同世代の女性が集まっていた。
皆それぞれに着飾って美しい。あくまでビジネスの延長と思っている椿とは
このパーティーに臨む意気込みが違っているようだ。
「私は……なにも……」
まさか、蒼矢との関係を男女のものと誤解されていたとは知らなかった。
椿は経営を学ぶことに集中するために周りからの評判を気にしないようにしていたから、世間の噂にも疎かったのだ。
「私ね、久我さんと正式なお席でお会いしましたの」