愛人でしたらお断りします!


「俺は、おまえとこうしたかった」

椿が戸惑っていたら、力任せに蒼矢の方を向かされたと思うといきなり唇になにかがぶつかってきた。

「ん……」

椿は、なにが自分に起きたのかわからない。
蒼矢に比べたら小さくて力もなくて……だから、大きな蒼矢の腕の中で身動きひとつとれない。

キスをしていると気がつくまでに5秒。
自分の口腔に蒼矢の舌が絡んできているのに気がつくのに、もう10秒。
それからやっとパニックに陥った。

(蒼ちゃんにキスされている!)

どうしよう、どうしようと考えていたら、不思議な気分に襲われてきた。
椿は自分の感覚に狼狽えた。キスだけで、身体中の力が抜けてくのだ。


(気持ちいい……)


椿は自分でも気がつかないうちに、ゆっくり蒼矢の真似をしていた。
唇や舌を彼のように動かしてみた。
すると蒼矢のキスがもっと深くなり、椿の身体の奥底からフワフワと意識が飛んでしまうほどの快感を呼び覚ましたのだ。
その時には、もう先ほどの春日あかねの言葉など頭の中から消え去っていた。


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