愛人でしたらお断りします!
「今、お茶を……」
椿が自ら茶の支度を始めたら、聡志は手を振っていらないと言う。
「さっそく話を始めよう」
「なんの話でしょう?」
叔父がここに来た理由がわからないので、椿は用心深く尋ねた。
「実はね、椿と久我蒼矢の関係がただならないものだって報告があって……」
「え?」
突然の言葉に、椿は意味を理解するまでに時間がかかってしまった。
『ただならないもの』という言い方が妙に気にかかる。
「君たちはいかがわしい関係だそうだね」
椿の迷いを感じたのか、ズバリと叔父は言いきった。
いかがわしいなんて随分な言われ方だと思ったが、椿が反論するより早く叔父は喋り続ける。
「椿は社長とは名ばかりで、久我君とKUGAコーポレーションがこの会社を操ってるっていうんだよ」
「まさか!」
「もちろん、ふたりに身体の関係があるからだ」
蒼矢と‶身体の関係”があると言い切られて、椿は狼狽えてしまった。
蒼矢とたった一度触れあった夜を、叔父に知られていたのかと焦った。
しかも触れたといっても最後まで結ばれたわけではない。
「まあ、お前はどうせ愛人なんだろう? 久我君にはどこぞのご令嬢と結婚の予定があるようだし、長年の付き合いだっていうのに椿と彼には一度も縁談はなかったんだから」
叔父のいう通り、これまで椿と蒼矢に結婚話など持ち上がったこともない。
それに‶愛人”だと決めつけられて椿はショックを受けたが、せめてもの抵抗をとの思いから黙り込んだ。