愛人でしたらお断りします!
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(もっと早くに決心するべきだった)
側にいると居心地が良くて、頼りになって、いつも甘えさせてくれて、チョッピリ厳しくて……幼い頃から自分の隣にいるのがあたり前だった人。
(蒼ちゃん……)
あの夜は、きっと彼は魔が差したのだ。
そうでなければ椿に手を出すはずがない。
蒼ちゃんは言った。
『俺は、いつでもお前とこういうことが出来る関係でいたいんだ』
叔父の言葉を聞いて、男女の関係に疎い椿にもわかってしまった。
言葉の意味をよく考えれば、‶いつでも触れていい関係”とは愛のない身体だけの関係を指すのだろう。
(バカみたい)
椿の心は乱れていた。
確かに叔父が言うとおり、キスはされても彼からプロポーズされたわけではない。
蒼矢ならどんな大企業のご令嬢でも選ぶことができるはずだ。
先日の春日あかねの自信に満ちた言葉が思い出された。
彼が結婚する相手は、どうやら彼女に決まったのだろう。
叔父の言いなりにだけはなりたくない。
おまけに信じていた拓真にも裏切られた。
もっと辛いのは、自分との噂が広まれば蒼矢の足を引っ張ることだ。
彼の結婚話や仕事に差しさわりが出ると予想される。
それだけはなんとしても避けたかった。
由緒ある久我家にまで恥をかかせてしまうなんて椿には耐えられない。
(それでも、私は……蒼ちゃんのことが……)