愛人でしたらお断りします!


「まさか!」
「昨夜、久我の家を出てからの足取りがわからないんだ」

「そんな……あ、でも」

市岡が何か思い出したようだ。

「なにかあったのか?」

市岡は急いで居間の方に走っていった。そして手にメモ用紙を持って帰ってきた。

「こちらを椿様にと思い、昨夜置いておいたのですか……」

昨夜、椿が帰る時に目につくように、玄関の花台に市岡が置いたメモらしい。
クッキーが美味しかったことと、玄関の戸締りのことを書き記している。
その横に、椿の字でメッセージが書き加えられていた。

『お世話になりました。お元気で』

「これを見て、なにか変だなと思ったんです。お別れの言葉のようで」

蒼矢は、自分の部屋に置いてあったバスケットを思い出した。

「もしかしたら、あれにも……」

急いで離れの自室に戻る。



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