愛人でしたらお断りします!
蒼矢が思った通り、バスケットに入ったクッキーの袋の下に封筒があった。
椿らしい、淡い水色のものだ。封はされていなかったから、蒼矢はすぐに中の手紙を読んだ。
『蒼ちゃん、いつもありがとう。たくさん迷惑をかけてごめんなさい。
疲れちゃったので、椿はもう社長でいられません。後のことは浜坂さんと蒼ちゃんにすべてお任せします。さようなら』
短い文章だった。
『疲れちゃった』という文字が、やけに蒼矢の胸に刺さった。
よかれと思って、厳しく指導してきたがそれが椿を追い詰めたのだろうか。
椿に社長が務まることを周知させたら、これからのふたりのことを考えようと思っていたのだ。
「椿、それならどうして……」
昨夜の熱いひとときが蘇ってくる。
(あれは、出て行くことを前提にしていたのか)
そんなことは思いもせず、椿が自分から身体を開いてくれたことに舞い上がっていた。
「椿……」