愛人でしたらお断りします!


セキュリティー会社に確認したが、ちょうど金木犀の植え込み辺りは死角になっているらしく椿の姿は確認できなかった。

いきなりの椿に家出に、栢野家も久我家も騒然としてしまった。
誰にも理由が浮かんでこないのだ。
『疲れた』という文面も、久保田たちからすれば信じられないらしい。
大変だけど毎日が充実して楽しそうだったというのだ。

その後、銀行でまとまった現金を引き下ろしていたことがわかった。
落ち込んで世を儚むとも思えなかったが、現金を用意したのは生きていくための資金だ思えたので、皆は少し安堵した。


だが、それからもなにひとつ椿の行方に繋がることは見つからなかった。
蒼矢の心は乱れたまま、月日だけが流れていった。




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