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湯の町
ここは、兵庫県の山間にある小さな温泉街だ。
国内でも古くから湯治場として知られており、硫黄の匂いが少し強めだが、それがまた体によいと評判だ。
街を流れる川沿いには高級な旅館もあるが、どちらかといえば長期に滞在できる手頃な宿が多いのは湯治場だった昔の名残だろうか。
最近は可愛いペンションも増えてきたので、若者から高齢の夫婦まで幅広い年代が集う温泉地となっている。
湯けむりの中、蕎麦屋や和菓子店、民芸品を扱う店や懐かしい射的などのゲームの店がいくつも並んでいて、週末ともなればそこそこの賑わいを見せていた。
この街では手打ち蕎麦や山陰から運ばれる海の幸などが有名だが、中でも自然に湧き出る炭酸水を使った素朴なせんべいが名物になっている。
何件もの店が製造販売しているが、特に『湯の町せんべい本舗 笹本屋』が元祖といわれていて一番大きな店構えだ。
温泉街の中心地から少し坂道を下ったところに由緒を感じさせる店舗があり、シーズンともなれば焼きたてを求める大行列ができるほどだった。