愛人でしたらお断りします!


***


「店長、いかがですか?」

「ああ、いい具合に焼き色がついたね」
美味しそうに焼き上がったタルトタタンを見て、拓郎は満足そうに頷いた。

「この後、カスタードクリームを作ってみてもいいですか?」
「この前言ってた、試作品のシュークリームに使うクリームかい?」

「はい! 少しでも濃厚なクリームが作りたくて」

祐次と椿がレシピを話し合っていたら、ひょっこり藍里が顔を覗かせた。

「お疲れさま!」
「藍里、どうしたんだい? 子どもたちは?」

「笹本屋の人たちが、うちの陸仁(りくと)と椿ちゃんとこの優愛(ゆな)ちゃんを離さなくって、こっちの店番に来ました!」

藍里はいつも陽気で、笑顔が眩しい元気な人だ。
手のかかる年頃の子を、嫌な顔ひとつせずに預かってくれている。
おまけに笹本の実家、湯の町せんべいの店でも時々子供たちを見てくれるのだ。


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