愛人でしたらお断りします!
「この先のこと考えたら、僕もちゃんと子どもたちを預かってくれるところを探しておいた方がいいと思っているんだ」
真面目な顔で笹本が話し始めた。
「椿ちゃん、これから先もずっとケーキ職人として頑張るつもりなんでしょ」
藍里が椿に念押しするように聞いてくる。
「もちろんです!」
「結婚したり、どこか別の店で働いたりとか考えてない?」
藍里は言い難そうに、さらに突っ込んて椿に尋ねてきた。
いつか椿が店を辞めるのではと、心配していたのかもしれない。
「まさか! 結婚なんて……ずっとこの店で働かせてください」
「いつまでも優愛ちゃんとふたりでいいの?」
「結婚は誰ともしません。優愛は私がひとりで育てるって決めたんです」
いつになく厳しい口調で椿が言うのを聞いて、藍里は謝罪した。
「ごめんね。立ち入ったこと聞いて。だったら、ずっと安心して働くことを考えよう。私たちと一緒に」
「ありがとうございます」
自分ひとりで優愛を育てていくなら、本当に大変なのはこれからだと椿は気を引き締めた。