愛人でしたらお断りします!
椿が笹本と相談していたのは、このシューに合わせるクリームだった。
生地が軽く仕上がった分、濃厚なカスタードクリームならピッタリ合うのではないかと考えたのだ。
濃厚なカスタードクリーム作りには、藍里が教えてくれた卵の配合を少しずつ変えて何度も挑戦した。
10月からは本格的に笹本も加わって改良を重ねた。
地味な作業だったが、ふたりはクリスマスやお正月シーズンに間に合うようにと頑張った。
そろそろ12月という頃に、ようやくシュークリームが完成した。
「これ、すごく美味しいわ」
ひと口食べた藍里が目を丸くするほど驚いていた。
「藍里さん、ほんとう?」
「それに、いつものシューより赤味があって可愛い色だし」
あっという間に藍里は食べきってしまった。
「これ、絶対に売れるわ!」
藍里は二個目に手を伸ばしている。
それくらい藍里には大好評だったが、実際にどんな評価を受けるのか椿はドキドキしながらショーケースに新製品を並べたのだった。