愛人でしたらお断りします!
「おまえに拒否権はない」
あまりにものめり込む蒼矢を見て、祖父はため息をついた。
「少しは頭を冷やせ」
「社長……」
「自覚しろ。お前は間違えたんだ。椿ちゃんが望んでいたことを選べなかったんだ」
「俺は……椿のためにプティット・フルールを守りたかっただけだ」
苦しそうに言葉を絞り出す蒼矢に、祖父は今度は優しく語りかけた。
「それが椿ちゃんの一番の望みだったと思うのか?』
「椿だって、親父さんの会社を大切にしたかったはずだ!」
祖父は大きなため息をついた。
「確かにそれもあるだろう。だが、椿ちゃんを社長にしたのはお前のエゴだ」
祖父からはっきり言われてしまうと、蒼矢は顔をこわばらせる。
彼にも自覚はあったのだ。
プティット・フルールを継ぐのは椿だと社内外に納得させるため、慣れない経営の勉強をさせ人見知りなのにパーティーにも参加させた。
自分と椿の関係を周りに認めさせるのにも必要なはずだった。
「俺は……椿がプティット・フルールの経営者に相応しいと認められてほしかっただけだ」
「じゃあおまえは、その後はなにがしたかったんだ?」
祖父からゆっくり問いかけられると、蒼矢は答えを探した。
「……それから俺は」